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【二階の培養場】

 いよいよ、二階の培養場へ案内していただきました。

 日本、いや世界で最初の羅紗千代田の玉松が培養され、世に送り出された培養場。
「素晴らしいですよ」と、何人もの方から聞いて期待していたお棚です。

 トントンと階段を上がると、おもとのお座敷があり、右(南)へ顔を向けると、二十坪余りのお棚がありました。

 綺麗で、広い。ワァー、何鉢があるのかと目を見張り、一瞬息を飲みました。

■当才千代田生え/150鉢(千代田羅紗・千代田獅子・選ばれた千代田系)

■二才以上の千代田斑/400鉢(千代田羅紗・千代田獅子・選ばれた千代田系)

■縞羅紗、当才、二才以上が多数。

登録羅紗等150鉢が並んでいて、まさに圧倒されます。

 どれも、特徴、個性のある素晴らしいおもとばかりです。それもそのはずで、淘汰されずに、強い縁があって残った物ばかりなのですから。

◎一列目の当才(十年生え)について

 千代田羅紗は何本生えたんですかと、勇気を奮って質問しました。

「二〇本はあるんじゃないの。二年目に羅紗になるのは、もう少しあるよ」

 ヒャーッと驚きました。
 スナップのように、写っているだけでも、十八〜十九本あるのです。

 特徴は、一枚目、二枚目の葉に、大判形、大宝形、大車形が表われていることです。

 私は今まで、このような「スプーン形で羅紗千代田斑の鮮明なもの」を見たことがありませんし、しかもこんなにたくさんの千代田羅紗を一度に見たことがなかっただけに、心底驚きました。

 そのうえ、千代田獅子もずらりとあるではありませんか。

生え羅紗千代田 北石×福松

大福×寒山

北石×寒山

北石×大松

【最後に】

 以上のように熊谷様は、時間の許すかぎりのお話と、ご自分の秘術の総てを、信念と自信、情熱を込めて公開してくださいました。

 おもと界全体のこと。登録品と素晴らしい実生が、車の両輪のように、バランスがとれていることの必要性等、さまざまなご意見を聞かせていただき、感銘を受けました。

 誌面の関係で。縞羅紗のさまざまな実親や、際立って輝いている生えのことなどを、記載できないのがまことに残念です。しかし、みなさんの代表として、目には焼き付けてまいりました。

 私も、全国の頑張っておられる皆様とともに、頑張らねばならないと、意を決した次第です。
 また、熊谷氏がこれからも、ますます素晴らしい活動と、素晴らしい実生の作出をされることを祈念しております。

 喉から手が出そうになる『素晴らしいおもと』と別れ、帰途につきました。

 今回の取材にあたっては、熊谷氏だけでなく、奥様にもさまざまにご迷惑をおかけした取材でしたが、大変お世話になり、心より感謝申しあげます。

註…太平洋に面していると言っても、ご当地いわき市の四季は、東海・関西等西日本と比べて、特殊性が多いと思われますので、施肥・植え込み材料・澗水管理等、培養技術については、質問を控えております。ご了承ください。


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