おもとは

 野生のおもとは、宮城県以西から鹿児島県にいたる日本各地の山々に野生種が自生しています。
 ユリ科・おもと属の常緑多年草で、木々などの少し湿度があるような所に何十年、何百年も繁殖を続けながら群生しています。

徳川家康

 今から約400年前、徳川家康が江戸開府の折り、おそらくは魔よけと徳川家の永続的な繁栄を願って、おもとを三鉢従えて入城したことが、古い文献に残されています。

 この時のおもとは、おそらく野生原種のおもとの中で縞が入った変わり物を山取りし、鉢に植え替え培養していたものを、家康に進呈したのではないかと考えられます。

 その後、この噂を聞いた各地の大名や豪商などが、家康公にならって美しいおもとを捜し出し、庭などで栽培し始めたようです。

一株二千両!

 江戸時代を通じて、おもとは開祖家康公の愛でた植物として広く愛好され、一時はおもとの一大ブームが起こり、中には一株二千両で取り引きされたおもとなどもあったようです。
 当初は、大名・豪商などの限られた趣味でしたが、茶道のようにやがて武家のポピュラーな趣味・たしなみへと変わっていったようです。

実生の始まり

 新しいおもとを作り出すための交配は明治に始まりました。
 この当時の書物は沢山残されております。おもとの種類も今と比べれば少なく、変わったおもとであれば結構評価されていたようです。

900種以上!

 今では、約900種類以上の品種が日本おもと協会に登録されているため、新たに生えたものが珍しいもののようでも、姿、形が過去の登録品種に似ている可能性も高まっています。このため、物まねにならないためには、おもと専門誌や書籍などで品種の勉強や、生えた実生の研究をする必要があります。

実親!

 新しいおもとを作出する方法は、「実親」という実を付け種を取る専用のおもとを手に入れることから始まります。
 数多くの有望な実親を交配して実を付け、これらの種を沢山蒔くことが、優秀なおもとを作出するための一番の近道だと言えます。確率が一番高い方法だと考えられています。

実親の種類

 実親の種類ですが、登録され名前が付いた血統の良い物が沢山あります。
 競争馬も血統を重視しているように、おもとの実親も血統が重要です。生えの確率が高い大宝、大車、大判、鹿島等々、沢山の実親の種類があります。

縞斑入り!

 これらの実親は、縞斑が入っていなければ雄用にしか使えません。青い実親を雌(種を付ける)にして交配すると、青いおもとしか生えて来ません。美しい縞柄の入った、小型の葉で変わったおもとを作る為には、実親の雌用にするおもとに縞が入っていなければ、生えた実生おもとには縞が遺伝しません。
 ですから、まずは縞が入った大宝や大車という優秀な実親を手に入れることが肝腎です。

[つづく]

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