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――西尾会長のお柵から―― 藤本 猛

▼肥料の秘訣、その1

 まず、知りたかった不可思議を解消するため、肥料の秘訣を教えてもらうことにしました。

「肥料ですか、ゾンネという4000倍に薄めた水肥を一年中やっていますよ、これは、岡山の小野田さんに教えてもらいました。ゾンネは有機肥料で、チッソ、リンサン、カリの配合率の違う物がありますから、季節によって配合の違った物をやっています。暑い夏は回数を減らしていますよ」

 これだけですかと尋ねると、会長の顔がニヤ―と笑っている、まだこれだけではなさそうな雰囲気です。

「花芽が伸びて、花が咲く前、一週間前にエバホウソA=ホウ素欠乏予防回復剤を1、200倍にして、葉にもかかるように一回だけ与えます、実付きが良くなり、シ―ナにもなりにくく、結果はとってもいいんですよ」

 花芽が見えてくる頃、チッソ肥料を多く与えると、実付きが極端に悪くなるそうです。そして、次々と肥料の説明が続きました。

「後で見てもらいますが、交配を終えると、雌雄の名前をラベルに書き込んで、差しておきます。それから、次に用意した三種類の肥料を、大さじの先に乗るぐらいの量を、鉢の縁三カ所に置くんですよ。マグアンプKの中粒と、ロングです。ロングは、長く肥料が効くという意味だそうで、チッソ13、リンサン3、カリ11、270日肥料が効いています」

「それから、F・T・Eアグリエ―スです、マンガン、ホウ素、鉄、亜鉛、銅、など沢山の微量要素を含んでいます。これは、岡山の清水さんに教えてもらいました」とのことです。

 これだけの肥料を与えていたのかと、ビックリ仰天です。

▼肥料の秘訣、その2

 驚いていると、「ま―だ、あるんで―す」と、とどめの一発が出た。

「花を付ける秘訣は、六月中旬の夏至の前後、この頃に来年の花芽が形成されるんです。だから、夏至の一週間前と後の一週間後に、二回ずつリンカリ肥料を与えてやることで、葉になるものと、花芽になるものが形成されるんです」

「リンカリ肥料はチッソ○、リンサン17、カリ17、苦土5の粒剤で、大阪レインボウ販売KKで扱っています。
何度も言いますが、チッソの濃い物を与えると、花芽が形成されず葉に変ってしまいます。リンカリ肥料の液肥の場合は一○○○倍ぐらいに薄めて与えて下さい」とのことです。

 資料用に写真を撮っていると会長の姿が消えました。遠くから声が聞こえます。

「三時のおやつに団子を食べませんか〜〜?美味しいですよ〜〜」と、皿に乗せた茶色い団子をもって来てくれました。よく見ると皿の回りに黒っぽい物が沢山付いています。

「これすごいでしょう。団子を食べたナメクジが死んでいるんですよ」

 なんとも強烈なジョークです。

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